ソーシャルブックマーク・サービスとは、ウェブのブックマークをウェブで管理するサービスだ。世界的にはdel.icio.us、日本でははてなブックマークが有名どころだ。
ところで、かつてブラウザのお気に入りを使っていた時には、ブックマークはサイト単位でつけていくのが普通だった。
しかし、ソーシャルブックマーク・サービスでは、気になったページをページ単位で片っ端から登録していくのが一般的らしい。
考えてみれば、ブログがホームページの主流になってからというもの、トップページをブックマークすることにあまり意味がなくなってきた。
普通のホームページと違って、ブログはトップページ(のコンテンツ)が固定していない。そこはその時点の最新の日記を表示する場にすぎず、日記が新しくなるにつれてトップページのコンテンツもどんどん移り変わっていく。
トップページをブックマークしておいても、もう一度お目当ての文章に行き着ける可能性は低いのだ。
だから、
- ちょっと気になったページを覚えておきたいという用途なら、ページ単位のブックマーク(もちろんその日記のパーマネントリンクにブックマークすることが条件だ)
- お気に入りのブログを毎日チェックするという用途なら、RSSリーダーに登録しておいて自動受信
というのが主流になりつつある。
ところで、このページ単位でブックマークするという発想は、実はぼくにとってかなりコペルニクス的な新発見だった。
これは、ブックマークの意味自体を変えてしまうとても大きな事件ではないだろうか。
サイト単位のブックマークはサイトへの参照をデータベース化するだけだが、ページ単位のブックマークは情報への参照そのもののデータベース化を意味する。
さらに、ソーシャルブックマークでは記事に「タグ」を付けて分類していくことができる。ひとつのブックマークにタグはいくつでも付けられるから、ページに片っ端から思いつくタグを付けてブックマークしていけば、索引付きの情報データベースが出来上がるのだ。
なるほど。というわけで、この考え方を逆用して、まずは当サイトのコンテンツを片っ端からdel.icio.usに登録してみた。もちろんタグ付で。
次に、del.icio.usの公開API(ちなみに、del.icio.usはAPIを公開しているので、そのデータベースを自分のサイトに自由に取り込むことができる)を通じて、登録したタグの一覧を取得する。
これを元に構築したのが、こちらのページだ(http://www.servees.com/commex/deux.cfm?mode=taglist.tag)。
ご覧いただけば分かるが、大小取り混ぜて並んでいるのが、ぼくが付けたタグ群だ。紐づけられたブックマークが多いタグは、大きいフォントで表示されている(これをタグクラウドと呼ぶ)。
どれでもいいが、タグをクリックすると、そのタグに紐づけられたブックマークを一覧できるページに飛ぶ。このページももちろん、del.icio.usのAPIを通じて取得した情報を元に構築している。
ここから、個々のブックマーク先の記事を読みに行ってもいいし、また各々のブックマークにはそれに紐づけられたタグの一覧が添えられているので、そこを起点に別のブックマーク一覧に飛ぶことも可能だ。
こうして、百科事典のように項目から項目へと自由自在に飛び移れる索引データベースが出来上がった訳である。
今回はソーシャルブックマーク・サービスの機能を逆手に取ったかたちで、自分のサイトの索引データベースを作ってみたが、同様の手順で外部サイトのデータベースをつくることはもちろん可能だ。
ところで、これは一種の「リゾーム」と言えないだろうか。
リゾームとは根茎のこと。
ポスト構造主義の第一(二?)人者であるドゥルーズとガタリが、「ツリー」の対立概念として「リゾーム」を置いて以来、この言葉は現代思想の重要なキータームとなっている。
ツリーがブラウザのお気に入りのような階層型の構造を意味するとすれば、リゾームはソーシャルブックマーク・サービスのタグのように明確な秩序を持たない構造(?)を意味する。
上下関係を持つ垂直な構造ではなく、ただどこまでも水平に、なおかつ縦横無尽につながっていくネットワーク。
それは、まさにウェブの姿そのものと言うことができる。
考えてみれば、これまでウェブを階層型のお気に入りで管理しようとしていたのは、とても滑稽なことだったのかもしれない。
ソーシャルブックマークを持つようになってはじめて、ぼくたちはウェブをそのあるがままのかたちで捉えることができるようになったのかもしれない。